仁木ミステリーと障害者

先生ご自身が小さい頃から胸椎カリエスを発症し寝たきり生活だったこともあり、
作品では同姓同名の主人公がその分身となって活発な行動的女子として事件解決に活躍しています。

その一方、障害者が登場する作品も他の作家に比べると、多く見られ
その人物ひとりひとりが生き生きとした姿で描かれています。

※現在では呼称が変更しているものもあります。
表題呼称は作品中に書かれたものを使い()内は現在の呼称となっています

身体障害
盲目(視覚障害) 就労・日常生活が不自由で視覚が弱い、または全くない状態。
梅井亜也子『青い風景画』 伊豆の別荘で暮らす主人公の従妹。22歳。
卯月とし江『くれないの文字』 マッサージ師。24〜5歳。
中田利彦『粘土の犬』 被害者の息子。4歳。
牧『明るい闇』 私立盲学校の数学理科教師。
聴覚・平衡機能障害 聴覚に不自由がある状態。また体の平衡感覚に支障をきたす状態。
音声・言語障害 言語の適切な理解と表現が困難な状態。
平作『みどりの香炉』 橋本家の使用人。聾唖者。
肢体不自由(運動障害) 人体の運動機能が永続的な障害がおき、日常生活に不自由が生じる状態。
沢井『あおい壁』 障害者訓練所生徒。二の腕までしかない。
小児麻痺
小児麻痺 小児期におこり、後に四肢などの運動障害を残す病気。種類は「急性炭白髄炎」「脳性小児麻痺」に分けられる。
カズちゃん『死を呼ぶ灯』 疎開に来た男の子。寝たきり生活。
水谷 仁『口笛たんてい局』 たんてい局メンバー。小学5年生。松葉杖をついている。
ポリオ(急性灰白髄炎) 脊髄の運動神経細胞(炭白質)が破壊されて左右非対称性の麻痺を残す病気。
ポリオウイルスによる感染症だが、2012年以降はIPVワクチンが用いられ発症は稀。
広池『あおい壁』 障害者訓練所生徒。足が悪い。
藤田『あおい壁』 障害者訓練所生徒。幼少時から車椅子生活。
桜内『あおい壁』 障害者訓練所生徒。片腕が利かない。
脳性麻痺(脳性小児麻痺) 胎児期から生後4週間以内に受けた脳神経細胞の損傷によって運動障害を起こす病気。
川奈辺リツヨ『しめっぽい季節』 身障者施設生徒。
三村澄枝『あおい壁』 障害者訓練所生徒。
淡井 勲『青じろい季節』 15歳。重度の脳性麻痺。
知的障害
精神薄弱(知的障害) 読み書き・計算などの知的行動の発達が遅れ、日常生活や学校生活に適応できない状態の総称。
1999年、表現を「精神薄弱」から「知的障害」と改めている。
ノンちゃん『恋人とその弟』 主人公の友人。22歳。
坂下新三『うさぎと豚と人間と』 養護施設生徒。16歳。IQ50。
押野キネ子
『うさぎと豚と人間と』
養護施設生徒。14歳。
神島敏江『うさぎと豚と人間と』 養護施設生徒。14歳。
寺岡清志『うさぎと豚と人間と』 養護施設生徒。8歳。IQ75。
広瀬『うさぎと豚と人間と』 養護施設生徒。放火癖があり、火の前で踊る奇行を見せる。
田津野房代『凶運の手紙』 主人公宅の隣人。
網野計治『陽の翳る街』 養護施設生徒。13歳。
ナミ『陽の翳る街』 養護施設生徒。
疾病による後遺症
中風(脳卒中) 脳血管障害(脳卒中)の後遺症である言語障害・片麻痺・手足のしびれなどの総称。
脳卒中の種類は「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血(脳溢血)」に分けられる。
元木伸介『誘拐犯はサクラ印』 中風の後遺症で足が悪い。
笹尾伸子の祖父『石段の家』 中風の後遺症で寝たきり生活。
中丸敬冶の義母
『うさぎと豚と人間と』
中風の後遺症で寝たきり生活。
脳梗塞 能の静脈が詰まる症状。
石神ハツノ『折から凍る如月の』 主婦。脳梗塞の後遺症で寝たきり生活。
脳溢血(脳出血) 脳の血管が切れてしみ出る症状。
大林 郁『赤い猫』 一人暮らしの老婦人。脳溢血の後遺症で車椅子生活。
日本脳炎 日本脳炎ウイルスによる流行性脳炎。感染すると高熱・痙攣・意識障害に陥る。
マスエ
『罪なき者まず石をなげうて』
18歳。日本脳炎の後遺症で頭は4歳児のまま。
カリエス 脊髄や歯などの骨髄組織に細菌が感染し炎症・化膿、後に骨髄組織が壊死により崩壊する状態。
仁木先生自身も4歳の時に胸椎カリエスを発症、横臥生活をしていた。
浜田峰夫『あおい壁』 カリエスで幼少時から寝たきり生活。
柳下喜美『みずほ荘殺人事件』 胸椎カリエスで寝たきり生活。
リウマチ 関節の炎症から骨軟骨が破壊される病気。
楠井涼子の祖母『虹色の犬』 リウマチ発症後、寝たきり生活。
病名不明 作品中に詳細な病気名が出ないもの。
天城房子『小さい矢』 団地くんションの2階に住む主婦。足が悪く車いす生活が続きあまり外出をしない。
美樹『しめっぽい季節』 身障者施設生徒。
南 克彦『あおい壁』 身障者施設生徒。やぶにらみで舌がまわらない。